専門性を未来へ“CONNEXION/つなぐ”

西欧社会では、水彩木版画は浮世絵版画と共に「日本独自の版画技法」としてたいへん良く知られています。 浮世絵は学際的な研究がたいへん盛んですし、近年では諸外国の表現者たちもこの伝統的な技法を、じぶんたちの表現分野にも取り入れたいと考え始めています。 しかし、木版画の重要な部分である「技法」とそれにまつわる素材、道具についての国際社会の理解は、まだ、十分であるとは言えません。 それは日本の木版画技法を取り巻く多くの職人や、道具、材料を生産する職人の方々が、好むと好まざるに関わらず伝統という保守的な世界で守られてきたこと、また、日本語という限られた言語で囲われてきたことによる情報不足にあると考えられます。

この度の第1回国際木版画会議は、日本国内の摺り、彫りの専門家やその高度な水彩木版画技法を支える道具、紙、絵の具、板などに携わる専門家のかたがたが一堂に会し、海外の多くの版画専門家たちと交流することを目的として開催されます。 当会議は、議論の場だけではなく、さまざまな展覧会、商品展示会、ワークショップ、実演、セミナーなど数々のプログラムを用意しております。

会議の目的

  1. 海外の表現者、研究者と、日本の彫り師、摺り師をつなぐ。
  2. 海外の表現者、研究者と、日本の素材、道具メーカーをつなぐ。
  3. 国内外の専門家が凸版技法の実践と理論を語り合い、情報の共有化を計る。
  4. 木版画を深めるために、更なる、関連の日本文化紹介にあたる。

日本の木版画技法は、職人の体験的な工夫により技術改良され、環境にも優しい部材や道具の組み合わせによるものです。この薬品処理を必要としない版画技法は、今後、ますます国際社会の要請となるでしょう。 日本の職人たちの手仕事を触れることで、現代社会が見失いがちなものづくりの本質を学び、新たな専門家相互の情報交流により、より安全で環境にも優しく、日本という地域性を越えた国際的な版画表現へと繋がるきっかけづくりになることを願い、第1回国際木版画会議を開催します。